多段変速の自転車をシングル化するために揃えるべきアイテムを、具体的な製品例とあわせて解説します。
なお、この記事ではSORAやクラリスなどのエントリーモデルに搭載される多段構成をシングル化する想定で書かれていることを断っておきます。
変速機を取り外した後に、駆動系と制動系を成立させるために以下のパーツが必要になります。
多段用のフリーボディ(スプロケットが刺さる部分)に1枚のコグ(ギヤ)を固定するためのスペーサーとコグのセットです。付属する多数のスペーサーの配置を変えることで、フロントとリアのギヤが一直線になる「チェーンライン」をミリ単位で調整できます。コグはチェーン外れを防ぐため、多段用よりも歯が高いシングル専用品を選びましょう。
中国製(MUQZIなど)であればAmazonなどでも入手しやすく、価格は2,000〜3,000円程度と手頃です。AliExpressなどの海外通販サイトを利用すれば、さらにお安く購入できることもあります。
代表例: DIXNA(ディズナ)セット、Reverse Components、ノーブランド品
価格相場: 2,000円 〜 6,000円
ロードバイクなどの「縦爪(ドロップアウト)」フレームは、ホイール位置を前後に動かせないため、チェーンの長さを調整して張ることができません。そこでリアディレイラーの代わりにテンショナーを装着し、下から押し上げたり上から押さえつけたりしてチェーンの弛みを取り除きます。プーリーの剛性が高いものを選ぶと、変速機特有の「チャカチャカ音」もなくなります。
こちらはgrange製。シンプル構造で見た目がかっこいい。上に押し上げる方向でも使用でき、リア周りがスッキリとまとまります。プーリーをシマノ製などの黒いものに変えれば、色が統一されて見た目が良くなる上、音も静かになります。ただし、アクスルシャフトと共止めする構造のため、ホイールの脱着時に必ず再調整が必要になる点はマイナスポイントです。
上画像はプーリーを交換してチェーンを押し上げる方向で設置した様子。押し下げるよりも見た目がスッキリしそう、リアのチェーンの噛み合いが強くなりそう、みたいなイメージですが、押し下げて使うほうが一般的だとおもいます。
こちらはaki world製。バネで下に押し下げる構造なので、細かいテンション調整が不要で扱いやすいのが特徴です。中国製から有名ブランドまで同じタイプのテンショナーが多数販売されている=理にかなったポピュラーな構造と言えます。ただし、製品の品質にはばらつきがあるので、価格やレビューには気をつけて選びたいところです。
上図はもともとチェーンを最短にしてるのでわかりにくいですが、ちゃんとバネで押し下げてます。grangeよりもアクスルに変なテンションがかからない点が○。ホイールの脱着の邪魔にもならず、見た目も思ったよりスッキリしている印象です。
説明不要、安心と信頼のシマノ製です。テンショナーとしての性能は間違いありませんが、せっかくシングル化したのにこんなに大きなディレイラーみたいなテンショナーをつけてしまうと、見た目がゴテゴテしてしまう点は唯一のマイナスと言えるかもしれません。
代表例: SHIMANO ALFINE(CT-S500)、SURLY Singleator、ノーブランド品
価格相場: 2,000円 〜 8,000円
ロードバイクや最近のクロスバイクでは、変速レバーとブレーキレバーが一体になっている(STIレバー等)ことがほとんどです。シングル化に伴い不要な変速機能を排除する場合、ブレーキ専用の単体レバーが必要になります。ドロップハンドルなら「ブレーキ専用レバー」、フラットバーなら「Vブレーキ用」か「キャリパー・カンチ用」か、自分のブレーキ本体の引き量に合ったものを選びましょう。
ブレーキは安全性に直結する重要なパーツなので、実績のあるメーカー品を選びたいところです。シマノやテクトロ(TEKTRO)の製品は安価でありながら信頼性もバッチリで、安心して使用できます。
デザイン性にこだわるなら、TRP製のブレーキレバーが人気です。肉抜き加工されたレバーなど、スタイリッシュな見た目でハンドル周りをかっこよくカスタマイズできます。
代表例: SHIMANO BL-R400(ドロップ用)、TEKTRO、TRP、シマノ SORA/Tiagraレバー
価格相場: 2,000円 〜 8,000円
フロントのチェーンリングを交換する場合に強くおすすめしたいのが「ナローワイド」タイプです。厚い歯(Wide)と薄い歯(Narrow)が交互に並んでおり、チェーンのリンクの隙間にガッチリと噛み合う構造になっています。これにより、激しい段差などの衝撃でもチェーンが脱落するリスクを劇的に減らすことができます。特に薄歯(3/32)チェーンを使用する場合は、このナローワイドが「街乗り最強の安心感」を生みます。
BCD(Bolt Circle
Diameter)とは、チェーンリングをクランクに固定するボルト穴を通る円の直径(mm)のことです(PCDと呼ばれることもあります)。クランクとチェーンリングのBCDが一致しないと、物理的に取り付けることができません。
エントリーロード(SORAやClarisなど)の多くは 110 BCD ですが、MTB用のクランク(104 BCDや96 BCDなど)やピスト用(144
BCD)など多岐にわたるため、事前にクランクの仕様を確認する必要があります。
クランクアームの数(ボルト穴の数)も重要です。主に 4アーム と 5アーム があります。
特に近年のシマノ製ロードクランク(SORA R3000やClaris R2000など)は「非対称4アーム(110
BCD)」を採用しています。これはボルト穴の間隔が等間隔ではないため、同じ4アーム110
BCDであっても、シマノ4アームに対応した製品(「シマノ4アーム用」などと明記されているもの)を選ぶ必要があります。一方、旧世代のクランクやサードパーティ製には等間隔の「5アーム」タイプも多く存在します。
T数(Tooth)は、チェーンリングの歯の数を表します。フロントのT数をリアのコグのT数で割った「ギア比」(ペダル1回転で後輪が何回転するか)が極めて重要です。
このサイトのギア比計算ツールを使用し、自分に適したギア比を見つけてください。ギア比は自転車の種類やタイヤ径で違いますが、シングルスピード初心者の方はケイデンス80〜90で時速30km程度を出せるギア比を基準にすると良いでしょう。
代表例: Wolf Tooth(ウルフトゥース)、RaceFace、DECKAS(Amazon等での定番)
価格相場: 2,000円 〜 15,000円
フロントのチェーンリングを2枚から1枚に減らすと、ボルトが余ってしまい固定できません。無理にワッシャーを挟むよりも、シングル専用の「短いボルト」を用意するのが安全で見た目もスッキリします。アルミ製なら軽量化とカラーカスタムも楽しめます。
代表例: SHIMANO、SUGINO、KCNC
価格相場: 1,000円 〜 3,000円
BMXやピストで使われる「厚歯(1/8)」は非常に頑丈で伸びにくいですが、フロントのチェーンリングが多段用のままだと噛み合いません。その場合は「薄歯(3/32)」用のシングルチェーンを選びましょう。注)このページで紹介しているパーツは基本的に多段用薄歯チェーンを前提にしています。
なお、薄歯チェーンを使用する場合は、8速用または9速用のものがおすすめです。10速、11速、12速用の多段チェーンも存在しますが、これらは高額であることに加え、変速をスムーズにするための構造(プレートの薄さや"しなり"構造)が、変速をしないシングルスピードの用途には適さない場合があります。
代表例: IZUMI(和泉チエン)、SHIMANO CN-NX10、KMC
価格相場: 1,500円 〜 4,000円
一般的な六角レンチなどのほかに、自転車専用の特殊工具が必要になります。
多段カセットスプロケットを取り外すために使用します。ロックリングを回す「フリーホイールリムーバー」と、ギヤが空回りしないように固定する「チェーンホイップ」の2つが必要です。
新しいチェーンを適切な長さに切断するために必須です。シングル用チェーンに対応しているものを選びましょう。
シングルスピード化において最も重要なのが、フロントの歯とリアの歯が一直線上に並ぶ「チェーンライン」の調整です。
ここがズレていると、異音の原因になったり、走行中にチェーンが外れたりする危険があります。コンバージョンキットのスペーサーを使って、ミリ単位で慎重に調整を行いましょう。
一見難しそうに見えるシングルスピード化ですが、揃えるべきパーツと工具さえ分かってしまえば、DIYでも十分に挑戦可能です。
パーツを購入する前に、当サイトの「Cycle Gear Ratio Calculator」で目標とするギヤ比を計算し、リアコグの歯数を決めておくとスムーズです。シンプルで壊れない、あなただけの1台を組み上げてみませんか?